二次元オタクがSexy Zoneと出会って卒業を迎えるまで

 
※オタク特有の鼻につく表現や冗長な文章・過剰に感情的な部分が含まれると思いますので、オタクが嫌いな人には向かなすぎる文章です。


2024年3月31日、Sexy Zone中島健人くんとSexy Zoneという名前からの卒業を迎えるにあたり、たくさん幸せにしてもらったオタクとして何かを残したいとは思っていた。
けれど絵は上手に描けないし、筆が遅すぎて間に合う気がしなかったので、しがない二次元オタクがSexy Zoneを好きになるまでや、なってからの思い出をブログに残すことにした。

途中で2次元の話などが入ると思うので、謎の呪文始まったなと思ったら読み飛ばして大丈夫です。

 

 

Sexy Zoneを好きになり始めたのは2018年、松島聡くんがお休みに入る前くらいからだったと思う。
歌番組でふまけんイノセントタイムやAIBOの『ぎゅっと』なども見ていたけれど、はじめて「新曲の時期」を体感してCDの発売を待ったのは、『カラクリだらけのテンダネス』だった。

 

2次元オタクをやっている私の周りの友人が、みんなそれぞれキンプリやSixTONESHiHi Jetsなど、事務所のアイドルにはまっていた。(幼い頃からアイドルを応援していた子もいるけれど、綺麗に時期が揃っていたという意味で)
その内の友人の一人が応援していたグループがSexy Zoneだった。

 

年末年始や長期休暇に集まると、カラオケで円盤を持ち寄って鑑賞会をした。
そこで少しずつアイドルの顔と名前を覚えていった。
そんな中、Sexy Zoneの初期の曲とPVのトンチキさは私にとって衝撃だった。
『Real Sexy!』のMVを観た時は涙が出るほど笑ったし、ドバイに行ったにもかかわらず、『バィバィDuバィ』のMVは日本で撮影したとか、『Sexy Summerに雪が降る』は秋発売というエピソードも忘れられなかった。
トンチキに惹かれたことは、好きになった理由のひとつとして間違いないと思う。

 

トンチキ曲を出していた頃の彼らは間違いなく苦労しただろうし、簡単に言っていいことではないかもしれないけれど、たぶんトンチキがなければ今の私もないので、オタクを惹きつける・話の種に絶対困らないという点では、Sexy Zoneが築いた財産と言っていいと感じている。

 

そしてその頃、私はちょうどアイドルを題材とした『アイドリッシュセブン』というゲームのストーリーに触れて、そのおもしろさに衝撃を受けていた。
そこに同じ2次元オタクの友人から「MEZZO"*1はテゴマスみたいなグループ内ユニット」「ジャニーズのMEZZO"がふまけん」と教えてもらったことで、よりとっつきやすく感じたのかもしれない。


とはいえ、私は3次元のアイドルのちゃんとしたファンになったことがなかった。
2.5次元に触れて楽しんだことはあったけれど、3次元のアイドルのファンというのは文字通り次元が違う存在だと思っていたし、根暗な陰キャの身からすると怖そうだなあと思う部分もあった。

ただ、Twitterで「#セクシー異文化交流」や「#ウェルカムトゥーケンティーワールド」のタグなどを見るにつれて、あれ?もしかして、三次元アイドルのオタクも、二次元のオタクとそう変わらないテンションで好きな人の挙動を愛しているのかな?と感じるようになった。
(もちろんファンアートにおけるルールなどは違ってくるのだろうけど)


Sexy Zoneがその美しいビジュアルや曲や挙動のトンチキさ、幼い頃から一緒にいたがゆえに醸し出される家族のような雰囲気から、2次元オタクからもとっつきやすい特色を持っていたのかはわからない。
(勝手に言葉をお借りして申し訳ないのですが、今でも「菊池、ガンダムに乗るな」というフレーズが一部に共通認識として伝わっているのはその証左になるかなと思っている)
けれど、二次元オタクの時から好きな人の挙動がトンチキだと嬉しい……というハマり方をしていた私には、Sexy Zoneはこの上なくフィットしていたのだと思う。
それが良いか悪いかはともかく、キャラクター的にSexy Zoneを覚え、好きになっていった。


なんとなく好きになってからCDをレンタルして曲を聴いてみたら、それがSexy Zoneの曲とは知らなかったはずなのに、『Ladyダイヤモンド』も『君にHITOMEBORE』も聞き覚えがあって驚いた。
君米は今でも好きな曲上位に入るくらい、当時から好きなメロディーの曲として覚えていた。
センシティブな話かもしれないが、この経験があるので「売れるといいね」みたいなことを言われてもしばらくぴんとこなかった。
まったくセクゾのオタクではなかった頃から曲に聞き覚えがあって、ランキングだって1位なのに、もう売れてるじゃん?と思っていた。

 


まだファンクラブにも入っていなかった頃、Twitterで回ってきたananのバレンタイン特集回のSexy Zoneの表紙が本当に良くて、欲しい!と思った。

www.oricon.co.jp


しかしananを買ったことがなかったので、発売日を忘れていて買い逃してしまったところを、友人が見つけて買ってきてくれた。
これが私の人生初のananだった。一緒に北海道旅行に行く待ち合わせの前に買ってきてくれたので、北海道はSexy Zoneのananと一緒に行ったし、以降私はマガジンハウスの写真信者になった。ananカレンダー大好き。

 

友人とバレンタインの催事場などを見に行った渋谷の駅に、ポプステの広告が出ていた。
今のように広告が出ると知って見に行ったものではなかったから、思いがけない出会いにはしゃぎながら写真を撮った。
一緒にいた友人に「もうファンクラブ入りなよ」と笑ってもらったのを覚えている。

 

今となってはSexy Zone箱推しのケンティーのオタクという自認だけれど、当時はケンティーに対して「友人の推し」という認識が強かったので、テレビで見かけると「友人が好きな子が出てるなあ」と思っていた。
年度末の残業が続いていた頃、帰ってテレビをつけると、ゴチにケンティーが出ていた。
お金が手に入ろうとも労働は嫌いで疲れ果てていたオタクの目に、信じられないくらいケンティーは可愛く見えた。
あまりにも可愛くてちょっと泣けた。好きなキャラと体型が近しいとか、いろんな邪念のようなものはあったけれど、その時には自分ももう中島健人くんを好きになっていたのだと思う。

砂の器も見た。人を殺す瞬間に子どものように泣き出しそうな表情をするケンティーの演技が今でも大好きです。

 

 

ファンクラブの入会を考えるようになったものの、三次元のアイドルのファンクラブに入ったことがなかったために、私はそれをとてつもなく重いことのように感じていた。
入会を人生における契約のように捉えていて、「自分がいつまでどのジャンルを好きかわからないのに、軽い気持ちで入会していいのかな?責任もてるのかな?すぐ飽きちゃわないかな?」という不安で、入会に踏み切れなかった。

 

結局、何がきっかけだったかは忘れたけれど「ずっと続くかどうかはともかく、応援したいと思っている人たちに、今お金を落とせる手段があるならいいか」と開き直って入会した。
真夏に届いた会員証は、郵便受けの中であたたかくなっていて、ぬいぐるみに感じるようにいのちを感じた。

 

結果として、Sexy Zone卒業の時にこんなブログを書こうとしているくらいなんだから、杞憂といえば杞憂だったなあと思う。
その年はたまたまコロナの影響でポプステの広島公演に追加で申し込めるようなタイミングで入会できて、慌てて飛行機などを調べたけれど、結局外れた、というか実施されなかった。
かわりに配信をしてくれて、配信でもないとライブの全通なんて経験は一生無理だろうからと、ポプステの配信はすべての回を買ったのもいい思い出になった。
勝利誕の回、プレゼントの上着を着たままぶかぶかの袖で踊る勝利くんが本当に本当にかわいかった。

 


アイドル初心者に「シンメ」という概念を教えてくれたのは、Sexy Zoneのふまけんだった。
ケンティーにトランプを教える風磨くんや、氷河期と呼ばれる時代や、8.25事件の「いつも見ていた流れ星が俺の手に落ちてきた感覚」は、あんスタやアイナナを通った二次元オタクをも震撼させた。
「事実は小説よりも奇なり」とはこういうことかと身をもって学んだ。


私がハマってからでさえ、時にはヒヤッとすることもあったけれど、不器用で、なぜかもじもじしていて、でも息も背中合わせもぴったりな、そんな二人の物語をリアルタイムで見つめていられるのが、物語のオタクとして嬉しかった。
シンメという概念を知ってからのオタクの世界は、それまでより広がって、輝いていて、楽しかった。
アイドルものではないジャンルでも、ここはアイドルパロだったらシンメだな……と考える選択肢が増えた。

 

 

周りにアイドルのオタクとしては先輩な友人たちがいてくれたことも幸いしつつ、事務所内のいろんな交友関係の一部を覚えて、そのおもしろさや奥深さを教えてくれたのもSexy Zoneだった。
この子は風磨くんの友達の樹くんとか、
ケンティーと同じ大学に行った永瀬くんとか、
勝利くんと仲良しの岸くんとか、
「友人の推し」に加えて、「好きな人たちの友達」として知っている人たちが増えて、テレビを見るたびに知っている人が増えるのが答え合わせみたいで楽しくて、嬉しかった。


その後、私にも応援するグループが増えたけれど、彼らを知ったのもSexy Zoneがきっかけだったし、グループ同士で絡みがあると大はしゃぎだった。
元からテレビをよく点けている家ではあったけれど、テレビを見ることを何倍も楽しくしてくれたのはSexy Zoneだった。

 


2次元オタクのアカウントでも、ジャンルやキャラとSexy Zoneの共通項があれば盛り上がり、テレビにSexy Zoneのメンバーが出る時はやたらと騒いで、その結果「見たよ」「覚えたよ」「意識するようになったよ」と言ってもらえたことが、嬉しかった。
自分の好きなものを共有できたことが嬉しかったのはもちろん、しがないオタクでもほんの少しだけ、Sexy Zoneに貢献できるようなことがあるだろうか……と考えたのは、たぶん初めての感情だった。これが「応援」なんだろうか、と思った。

 

2023年12月のドームツアーの福岡2日目は、その二次元アカウントで知り合った方と参加した。
その方とは2次元がきっかけで出会い、Sexy Zoneがきっかけで初めて顔を合わせた。前からYouTubeのMVを観てくださっていて、ハニハニのMVが特に好きだと言ってくれた。セクゾの話をしたことはあったけれど、実際にお会いするきっかけがセクゾになるとは思いもしなかった。
アリーナを引いて、近い近いと一緒にはしゃいだり、泣いたりできて嬉しかった。めちゃくちゃいい人だった。
(※他にもご一緒してくださった方は全員いい人で、本当に人様との巡りあわせには恵まれる幸運なオタクでいられています。今回は2次元きっかけとしてこの思い出を挙げさせて頂きました。どの公演も本当に楽しかったです)


そんなふうに、自分の好きな2次元コンテンツを事務所でキャスティングするならこれ!と盛り上がっていたし、2次元アイドル⇔3次元アイドル間の曲のカバーも絶対してほしかったし、これが見れなきゃ死ねない!と思っていたものがいくつもある。
もちろんオタクの夢物語だから叶う可能性はもともとほぼなかったけれど、Sexy ZoneでTRUMPシリーズ*2は……?事務所でダンスマカブル*3は?と未練が尽きなくなってしまったので、本当に死ねなくなってしまったのかもしれない。
(事務所単位ならまだチャンスはあるのかもしれないけれど、Sexy Zoneで見たいと思っていたものがあまりにも多いし、ハロプロでリリウムをやったのはやっぱりとてもすごいし羨ましい!ふまけんのソフィとウルのリバースキャスト*4見たかっただろ!ポニキャだし!!)

 


そして、本格的に好きになった時期的に、私は5人のSexy Zoneを生で見られたことがなかった。
聡ちゃん復帰後の5人のRUNや、NOT FOUNDの一部の音楽番組では運よく見られたけれど、生で、というのはなかった。(卒業前ラストのカウコンも外れた)
5周年はもちろん、SZ10THにも当たらなかった弱いオタクだったので、薔薇を掲げるサプライズに参加できたこともなかった。

 

そんな私も、ありがたいご縁があって2023年の「ChapterⅡ in DOME」東京ドーム最終日である12/26の公演に参加することができた。
この時にはもう改名が発表されていたので、Sexy Zoneという名義のもとでは最後になるとは理解していたものの、サプライズがあるとは夢にも思わず油断しきっていたので、開演前のサプライズのおしらせにドキドキしていた。

 

この日は、マリウスも客席に来てくれていた。
風磨くんたちが呼びかけて、カメラもマリウスの姿をモニターに映した。
特典映像をまだ見られていないので、もしかしたら都合よく脚色されている記憶で物を言ってしまうことになるが、『フィルター越しに見た空の青』を歌い、マリウスを指差して、身を寄せ合う4人がいた。


あの瞬間、確かにSexy Zoneは5人だった。
5人のSexy Zoneと同じ空間にいられたことが、本当に嬉しかった。
メンバーが何度も言葉で、開いた手のひらが示す5本の指で、ずっと伝えてくれていた「5人のSexy Zone」を見るという夢を叶えてくれたのも、ほかでもないSexy Zoneだった。
マリウスの卒業に納得はしつつも寂しさは拭えなかったから、どうしても切なさは残ったけれど、それでもあの瞬間、誇張なく美しい永遠を見たのだと思った。
ふまけんの背中合わせで、あの広い東京ドームに大歓声が沸き上がり、揺れたのを肌で体感したことも含めて、忘れられない景色だった。

 

 

お休みしていた聡ちゃんが戻ってきて、5人がまた揃う奇跡があるのだと、夢が叶うという幸福を教えてくれたのもSexy Zoneだった。
マリウスの卒業で、どうしようもなく寂しくて涙が止まらないけれど、これ以上ないくらい綺麗な旅立ちを教えてくれたのもSexy Zoneだった。

 

2024年1月8日からずっと、Sexy Zoneはまだ言えないこと・これからも言えないことがあるだろう中でも、真摯に言葉を尽くしてくれていると感じている。
大変申し訳ないことに、私はそれに彼らの人としての優しさを確かに感じ取りながらも、まだほぼ何も前向きにはなれていない。
叶うのならずっとこのまま終わらないでほしいとも思ってしまっている。
けれど、時間がかかってもいつかゆっくり受け止めて飲み込めるように、彼らが届けてくれるものはしっかり受け取って、留めておきたいとも思う。


本当に寂しいし、正直言うと今回ばかりは「もうアイドルを好きになるのをやめたい、これで最後にしたい」とすら思ったけれど、間違いなくSexy Zoneは私に3次元のアイドルを応援する楽しさを教えてくれた。

コンサートのためにはじめて一人で飛行機に乗り、新幹線に乗り、北海道、新潟、福岡……といろいろなところに行く機会をくれた。
人生の喜びを増やして、豊かにしてくれた。

 


初めて好きになった3次元のアイドルがSexy Zoneでよかった。
私の人生において、それ以外はありえなかったと思えるくらい、よかった。


Sexy Zoneというグループが、そこに所属しているメンバーが大好きです。

Sexy Zone中島健人くんが、菊池風磨くんが、佐藤勝利くんが、松島聡くんが、マリウス葉くんが大好きです。
Sexy Zoneのふまけんが、けんしょりが、しまじまが、健マリが、さときくが、ふまそうが、風マリが、しょりそうが、しょりマリが、聡マリが、大好きです。

 

Sexy Zoneが大好きです。

 


本当に本当に寂しいけれど、出会わせてくれてありがとう。
あなたたちの人生に、優しく、あたたかく、嬉しく、幸せなことだけ降り注いでほしいと、本心で願っています。

 


2024.3.31
まだ配信ライブを待っている状態の、しがないオタクより。

 

 
 

*1:ゲーム『アイドリッシュセブン』に登場するアイドルグループ・IDOLiSH7のメンバーの内、四葉環・逢坂壮五の二人から成るユニット。メンバーカラーはそれぞれ水色と紫。『Dear Butterfly』という曲もあるし、出会ってすぐの静電気エピソードもあり実質エレショもしている

*2:吸血種と人間種が共存する社会の物語。ざっくり言うといわゆる登場人物間のクソデカ感情が大きな見所のひとつ。https://trump10th.jp/

*3:アイドリッシュセブン』における劇中劇。https://idolish7.com/ldm/

*4:リバースキャスト:対の立場となる二つの配役を二人一組の役者が交互に演じるもの。https://www.ponycanyon.co.jp/visual/PCBP000052244

映画「法廷遊戯」感想

 

映画4回とパンフを読んだ段階で書いている途中に原作を読了した映画法廷遊戯の感想(ほぼ箇条書き)
長くてまとまってなくて読みづらくて、文章のオタク臭さがどうしても抜けなかったです
悪気なく無関係の他の作品の話もしてる(法廷遊戯を含めてどれも好きというだけで他意はないです)

長すぎたので一応ざっくりとした見出しで分けたけど、その項目の中でも他の話してたり、その逆もあります


【清義絡み】

・映画初見時、冒頭の駅のカメラのシーンで入るスクリーン間違えた……?と思ったけどそんなことはなかった
 2回目以降で美鈴や馨のお父さん、そして階段の下から二人の様子を見ている清義の姿にも気が付けた

 

・映画の清義くんが下宿してる設定なの、めっっっちゃくちゃかわいい~~~!!!!
 初見時は「久我先生、いつもわかりやすく勉強を教えてくれてありがとうございます」みたいなメモが部屋の壁に貼ってあるのを見て、エッ清義くん家庭教師とかやってるの!?そんな最高のビジュアルで!?勉強教えてくれるの!??何人の学生たちを恋に落としてきたんだ……って心配になってしまって、そればかり考えていた
 一瞬に近い情報なので、オタクの都合のいい幻覚かとも思ったけど、パンフにもちゃんと書いてありました 助かる

(追記※家庭教師の清義へのお礼のお手紙、カレンダーに貼ってあるってことは嬉しかったのかな かわいい)

 

・下宿先の玄関前に入居者のお昼用と思しきおにぎりが置いてあるのも本当にかわいかった 下宿先でのシーンは歯磨きとかおにぎりとか水槽とか、かわいいも美しいも兼ね備えていて好きなものばかりだった
 清義くんが「たまご……と、しゃけ」っておにぎりを選んでたシーン、おそらく多くの永瀬くんファンが「ツナマヨじゃない……」って思ったんだろうな

 

・下宿先といえば、やっぱり清義くんがおばあちゃんに呼ばれて霧吹きシュッシュッてされて寝癖直してもらってるシーンがとびきりかわいすぎて唇噛んでた
 あれは寝癖直しなのか、それとも植物用の水の霧吹きだったりするのか(近くにサボテンとか観葉植物があったから植物用かもしれない)

 

・清義の過去を暴くビラが撒かれてから無辜ゲーム会場に移動するまでの間に「俺の過去をばらした人がいる」的な清義くんのモノローグが聞こえたように感じて気になってる
 時々一人称おれになることがあるのかな?と思ったけど、その後特にそういった場面には気づけなかったので、実は他にもあるのか、音響とか私の耳とかバックの音とか様々な要因が重なった聞き間違いなのか、まだわかっていません 次観た時確かめたい
 ※4回目見たけど確かに「俺」って言ってたと思う

(追記※無辜ゲーム中の「僕の過去を暴くビラが」って言い回しと比べると「俺」「ばらした」共に結構ラフな言い回しなので、清義としてはやっぱり意外かもしれない 無辜ゲームは裁判だからある程度かしこまった言い方するとはいえ)

 

・藤方、感じ悪いけどロッカーに貼ったり写真集を学校に持ってくるくらいアイドル好きなんだ……と思ったら、EDのスタッフロールで藤方の推しがイコラブさんだったのびっくりした こんなところでお会いするとは
 藤方、イコラブ好きなんだな ほんと感じ悪いし私も一緒の環境にいたくないとは思うけど、頑張ろうよ イコラブ推し法律家になってイコラブを守ろうよ(?)
 原作終盤、藤方が再登場して勉強続けてたの嬉しかったです

 

・清義の幼少時代の子役の子、絶妙に昔の永瀬くんに似てる子見つけてきたなあ!?と思ったんですけど私の目がにわかなだけかもしれない……
 でも見るたび昔の永瀬くんにお目目とかお口のあたり似てるな……って感心してしまう

 

・藤方(戸塚さん)になじられた時の清義の表情のグラデーションが繊細過ぎる……
「ひとつ聞いていいか?」って言われた時は、ぎこちないながらもまだ一応笑顔で小さく頷いてるんだけど、「殺人未遂の犯人が、なんでここにいるんだよお!?」って言われた時の「殺人未遂の犯人が」の部分を耳にした途端、その笑顔が揺らいで傷ついた表情をするというのが本当に繊細 芸術
 永瀬くん本人も言ってたような気がする「感情のグラデーションを心がける」というのがあまりにも上手すぎた

 

・後々清義が過去にしたことがわかると、彼がまともに傷ついた顔を見せるのめちゃくちゃタチ悪いな……と思ってしまう瞬間もある
 彼も生きているので傷ついてはいけないということはないんだけど、あまりにも純粋に傷ついた顔をするので……加害者に見えない感じがタチ悪いというか
 馨の家に行って、馨のお父さんが誰なのかを知ってしまったシーンの表情とかも本当に上手すぎて、永瀬廉さん……なんで……なんでそんなに傷ついた表情が上手い……オタク狂ってしまうんだけど……

 

・この馨の家で伯母さんの話を聞いた時の清義の表情の変化と演出の合わせ技も本当によかった
「女子高生を痴漢して捕まったが本人は否認し続けた」という情報だけなら、過去の自分たちのやったことに心当たりはあったとしても、それを「僕たちが知っているあの人」と断定することは難しいと思うんだけど(清義が出会った時点で馨とお父さんはもう姓も違うし)清義が話を聞いているのは馨の家で、そこには馨と両親の写真が飾られていた
 最初は視聴者に馨と両親の幸せだった頃の思い出を印象付ける手のひとつなのかなと思ったけど(もちろんそれもあるとは思う)、3回目にしてこのタイミングでやっと「清義カメラ」(清義視点で撮影中ずっとついていたらしいカメラ)のことも思い出し、話を聞いただけの清義が目に見えて動揺して息を乱していくあの様子にさらに納得がいった
 伯母さんの話と家族写真で確信を得るほど真実を結びつけることができてしまったということなんだろうけど、私は本当にただ視聴者向けのカメラワークだと思っていて、清義がその写真を見ている可能性に気づくのが遅れたので、気づいた時かなり感動してしまった……
 あの本当に永瀬廉さん、どうしてそんなに追い詰められていく表情が上手い……………変なヘキ植え付けられるよ……

 

・血塗れの美鈴を見た清義の怯えのような表情も本当に、本当によかった どうして……そんなに……上手い……

 

・永瀬さんの表情(演技の仕方?)の話で言うと、パンフや他のインタビューでも「監督からの指示は詩的なものが多くて、それが独特だったけどわかりやすかった」といったような旨の話をしていたのが印象的で記憶に残ってた件について
 私の感じ取ったことが合ってるかはともかく、それをふまえて実際見てみると、黙秘を貫く美鈴に対しての表情や、馨のお父さんのことがわかってからの清義の心ここにあらずみたいな、憔悴しきった感じの表情、まさしく「熱にうなされるような気づき」「雲の上を歩くような感覚」という表現がぴったりで、詩的でいて的確な表現ってこれのことか~!って感動した

 

・映画では無辜ゲームを終える時に参加者が蝋燭の火を吹き消す演出があったけど、清義が結城家を訪ねた場面では、馨の仏壇にある蝋燭は当たり前ながら吹き消されるようなことはなくて、それがまだ「馨の仕掛けたゲームは続いている」感があるのもよかった
 序盤の無辜ゲームの時に藤方が「消すな!おい!」って喚いてるシーンもあるので、火が残っている意味をなんとなく考え続けてしまう

(追記※ この仏壇の二本の蝋燭の間に清義の顔があるという構図、序盤の無辜ゲームでの蝋燭の間にある馨の顔と構図が一緒っぽくて、ますます映像天才すぎる……になった)


【馨と清義絡み】

・馨、清義に「自分と父の眠る墓にリンドウの花を手向けてほしい」っていうのが……
 映画を観た多くの人がリンドウの花言葉は調べたと思うんだけど、清義と美鈴が暴力で理不尽に追い詰めて死なせてしまった自分の父の前に「正義」の花言葉を持つ花を供えろという……
 ぱっと見脅迫のようにも見えるし、清義の善性への信頼にも見えるしというところがすごく結城馨っぽい 結城馨のこと何もわからないけど……
「悲しんでいるあなたを愛する」の花言葉復讐のようにも聞こえるけど、正義と向き合ってくれるであろうあなたの人間性を愛しているという感謝のように思えなくもない気もしてくるし……

 

・馨みたいなキャラクターって、真相が明らかになると豹変して本性を出してくる……みたいなのが結構予想しやすいと思うんだけど、実際彼はそういう人物ではないのが余計に怖いというか
 彼の行いは明らかになっていくし、それによって見えなかった性格もだんだん見えてくるところはあるんだけど、ここまでのことをやっておいて、清義や美鈴に対して感情的になったり声を荒らげたりすることもないところがすごく独特だなと思う
 伯母さんも「馨もどんどんおかしくなって、法律を勉強し始めて」と言っていたので、狂い始めていたのは確かなんだろうけど

 

・清義に自分の何年分もの日記を読ませる精神性とかもう凄まじすぎる
 単純に馨が幼少の頃からパソコンで日記をつける習慣があったのかわからないけど、そうでなかった場合、清義に読ませるために幼い頃の自分の家族との幸せな思い出を日記帳からパソコンの機能にわざわざ書き起こし、それが崩れ去った時、そして自分が死ぬ前に至るまでの記録まで残すという執念、恐れ入るよ……

 

・もちろん父を奪われた馨の怒りというのは正当なものだと思うんだけど、私のような凡人からすると、馨が最初から最後まで憎しみで動いていた方がよっぽど腑に落ちるのに、どうやらそうではないらしい

 

・馨の動機が明らかになってから、馨と清義の学生生活のシーンが流れるたびに、それを「一息つける微笑ましいシーン」と言っていたキャストインタビューを思い出すたびに「いや……馨、どんな気持ちで……!?」になって冷や汗かいてしまっていたんだけど、映画を観た後に、馨を演じた匠海くん本人の「矛先を司法に向けた時点で清義と美鈴にネガティブな思いはなかった」というコメントやラストシーンへの「天国への階段をのぼるような」的な解釈を読んで、やっとそういうふうに落とし込めるようになってきたというか

 

・一連のゲームも日記も、恨みがないとできなくないか?と思うけど、まずスタート時点ではさすがに恨みがなくはなかったと思うし(清義と実際に言葉を交わして、清義と本当の友達になって、そこから変わったものは確かにあっただろうということでもある)
 ただ清義に友情を感じたからといって、一番の目的が「父の無実を証明すること」なのは変わらなかっただけで……
 リンドウの花言葉に触れたのと重なってしまうけど、清義のことを好きになったからこそ、清義の中の正義を信じて、それを見せてくれないかと願ったのかもしれない……?
 わからない……わからないけど結城馨のことずっと考えてしまうな……わからないから……

(※追記「セイギはどうして施設に?」から始まった話の流れで、馨の「でも父ももういない」に清義が「知らなかった」って返した時、どんな気持ちで聞いてたんだろうな、馨……)

(※追記 弁護士になった清義が下宿先の玄関から出たちょうどそのタイミングで馨から電話がかかってくるのですら最早怖いからね そこまで清義のことを理解してるのかもしれなくて)

 

・終盤、結城家のお墓の隣で清義が天秤マークのかかったUSBを見つけてからもう一度奈倉先生と無辜ゲーム会場を訪れる場面の話
 馨が死んだあの場所だけ洞窟に天井がなくて空が見える場所になってるのを、ここで初めて見上げたと思うんだけど、洞窟の上に生い茂る木々の枝葉に隙間がちょうど二つあって、無辜ゲームを仕掛けた側が残す天秤の形みたいだなと思った
 美鈴の言う通り、これは馨が最後に仕組んだゲームだから、この現場も仕掛けた側が残した証拠そのものなんだよとも捉えられて壮大だし、清義と美鈴がいる馨の掌が大きすぎる…………

 

・馨の夢を見ていた清義が目覚めるのが「電車の音」によってというのがまた意味ありげで、良い……


【美鈴と清義絡み】

・清義と美鈴の過去のシーン
 清義が施設に来た美鈴にドロップをあげるシーン、清義としては何気ない気遣いや優しさだったのかもしれないけど、ずっと放置されて死にかけていた美鈴にとっては、ただそこにいるだけで飴(食べ物・愛情)を与えてくれた人になったんだなと思うと、てのひらのドロップをじっと見つめる美鈴の姿に胸がきゅっとなる
 運命の果実じゃん……(ピングドラム

 

・施設長を刺したナイフを握ったまま離せない清義の手を、美鈴がそっと解かせてナイフを自分がとるシーンも好き
 清義が刺したことは隠せないわけだからあの場でナイフを貰わなくてもいいように思えるけれど、「あなたは私が守る」の言葉に含まれた覚悟の通り、美鈴の血もその時血で汚れるという描写が良くて……

 

・美鈴の手引きで清義が少年院行きを免れて、二人で帰りながら話してるシーン
 観客視点では二人の行く道にずっと長く伸びた草が茂ってるんだけど(二人が歩いてる道自体はそうでもないかも)清義が「弁護士になろうと思う」「美鈴、一緒に行かないか」と告げたあたりで、道が一気に開けて、十字路(交差点?)になる描写が印象的だった
 清義が美鈴のために施設長を刺したところも間違いなく人生の分岐点だったけど、この場面も刺傷事件を経て共犯になってからの二人の分岐点の一つだったし、美鈴にとっても清義と生きていく道を示された忘れられないハイライトだったんだろうな

(※追記「一緒に行かないか」のあたりから、美鈴の後ろを歩いていた清義……という順番が入れ替わって、清義が美鈴の前を歩いている演出も良い)

 

・清義も美鈴も、原作より映画の方が幼い年の頃に施設に来てるので(原作は中学生の清義が部活から帰ったら母親が自殺してた)、より「救われなかった子どもたち」感があり、終盤の美鈴の大人への怒りの吐露の凄まじさに繋がっている感じがした

 

・美鈴、清義をガン見しつつ徹底的に黙秘するとかいうすごい技してたけど、検察側が過去の痴漢(冤罪)事件に気づいたという話を清義から聞いた時にはちゃんと目が泳いでいる(原作だと「思ったより早いな……」と口走っていた場面)ことに2回目で気がついたので、ちゃんと清義からの「大丈夫か?」にもつながってるし、細かいなあと思った
 当たり前だけど清義もやみくもに大丈夫か?って聞いてるわけじゃなくて、美鈴の様子を見て聞いてるんだなというのがわかったので……
 この映画、1回目ももちろんだけど2回目以降が異様におもしろすぎる
(2回目で一番最初にうわ~……ってなったのは、まだ過去の事件の全貌が明らかになってない時に駅の階段のシーンで清義の奥にぼやけている馨の姿を見つけられた時です 「い、いる~……………」になって居た堪れなかった) 

 

・「清義は私の正義のヒーローなんだって」「違う、あれは暴力だ」「それでも私には生きる理由になった」というやりとりが初見の時からめちゃめちゃ刺さってしまった
 許されることではないのは当然なんだけど、物語として見た時に美鈴の切実さにどうしても胸を打たれてしまって……

 

・この清義の言う「暴力」の話
 清義は施設長を刺した事件で弁護士(生瀬さん)に出会って、「君を救うのは暴力ではなく知識」と教えてもらったことで弁護士を志すようになったけど、馨のお父さんの事件って、その後の清義と美鈴が起こした事件(暴力)ということになるのが、やるせないというかどうにもしようがないというか……
 もともと痴漢冤罪詐欺なんてするつもりはなかったのに、本当に痴漢されていた美鈴を助けたら痴漢からお金を押し付けられて、それがきっかけで詐欺の手段としてしまったのも……これもある意味知識といえばそうかもしれないけど……
 ここは原作だと「弁護士を志すために大学に入るのに途方もないお金が必要だった」という理由が明言されているのがわかりやすかったかも 映画でも序盤で清義が「特待生」って呼ばれてるのがその描写にあたるのかもしれない
 何にせよ「知識をつけなさい」という言葉を受けた清義が頼ったのが暴力だったというのが、暴力から抜け出せなかったのが観終わった後もじわじわずっしりくる

 

・無罪が覆らないだろうというところまできて、最後に清義が接見しにきた時の、美鈴の花舞ってそうなトーンの浮かれ切った「きよよし~」って声、場にそぐわなすぎて怖いのと一周回ってかわいいのとが同時にくる 雑な言い方してしまうと、ヤバ女は好きな方なので……
 まさか清義があんな決意してるとは思いもしなかっただろうからね……
 それはそれとして、ここで弁護士バッジを外していた清義、部屋の暗さでの色の加減とかもあり、喪服っぽく見えるのもいいなと思った

 

・「僕も、美鈴と生きたかった」で面会を終えた清義を見た後だと、愛し生きることの「想いが永遠に変わらないこと わかっていたから」って歌詞がめちゃくちゃ刺さってしまう
 確かに清義の選択は生きている美鈴より死んだ馨を優先したように見えるのかもしれないけど、罪を償った後美鈴を迎えに行くんじゃないかとも言われているし、永瀬くんも「二人に対して愛のある選択」と捉えているようだし、「あの振り払った手も 叫び声も 優しさを帯びていたのかな」も個人的にはめちゃめちゃ清義から美鈴への愛を感じているので、あんまり愛の比重に対する不公平感みたいなのも感じなかった

 

・まあ清義がすべて終わった後に美鈴を迎えにいったからといって、既に壊れている美鈴がどうなってるか・どうなるのかはまったくわからないですけど……
 無罪判決を受けている時の美鈴の笑い声とか、そんなのどうだっていい(早く清義に会いたい)みたいに体を揺らすあの身振りからして、これ戻れるのか?みたいな感じするし……
 美鈴は原作より映画の方がもうめちゃくちゃに壊れちゃってるんだなという感じがするので、原作の美鈴なら戻ってきた清義に怒った後にまた一緒に生きていけそうな気もするけど、映画は美鈴が死んだり殺したりしないか不安になるな 清義がいつか戻ってくるのは事実だからそれを頼りに生きてくれるかもしれない

 

・ただ、人を刺してまで、そして無実の人を追い詰めてまで、清義が美鈴と生きることを守ってきたのも事実な一方で、それを馨への償いのために諦めたというのも、馨に対してそれくらいの愛を清義が向けていたのも事実であって(それこそ永瀬くんの言う通りまさしく「二人への愛」なので)
「清義がいれば他に何もいらない」と嘘偽りなく言った美鈴を思うと、ラストシーンの回想で仲良くじゃれあいながら階段を駆け上がっていく清義と馨の姿を見ている美鈴の姿に、本当にどうしようもないくらい胸が痛くなる
 撮影した杉咲さん本人もこのシーンがラストにくるとは思っていなかったみたいだけど、このシーンをラストに持ってくるセンス……本当にひどいことする(褒め言葉)

(追記※判決前の最後の面会室で清義がいなくなった後の美鈴、叫び声をあげながら床へとずり落ちていくので、それが余計に天国への階段を駆け上がる清義と馨との上下の差があからさまで見ててつらくなってしまった

 もちろん美鈴だけ地獄行きです!ざまあみろ!なんて話じゃないのはわかっているけど、馨の仕掛けた法のゲームの中で明確に逸脱したのは美鈴なので……)

 

・また監督の指示が詩的だけど的確という話に繰り返し戻ってしまうけど、美鈴から清義への思いが「極楽の蓮の花を仰ぎ見るようにセイギのことを見続けながら」と表現されてたの、このシーンを指していなかったとしても、構図がそのままここにしっくりきすぎて……匠海くんもここで二人の行く先を天国と連想していたし……

(追記※アイスピックが突き立てられてた美鈴の家でのシーン、清義の「藤方を操った犯人がいると思う」には静かに頷いて、「同じ人物だと思う?」って問いかけには無辜ゲームおよび裁判の流れを模して「はい」って答える美鈴、清義の「思う」に対するニュアンスの聞き分け方がすごい)

(追記※嫌がらせの犯人を突き止める最中の美鈴が、子どもたちに「悪いやつをこらしめるために必要なことなの」って言うの、本当に脚本からの皮肉がきいててすごい)

(追記※美鈴、「清義がいれば他に何もいらない」と言うように「清義のためには何でもできる」みたいに振る舞っているし、もちろん実際そうなんだろうけど、美鈴が「だんだん壊れていく」と表現されているのを見ると、清義のためとはいえノーダメージではないんだろうなというのが余計に痛々しい

 清義のためなら殺人だってできるけど、殺人が美鈴に与えた負荷も本当に大きかったんだろうなと思うし、自分を戻れないところまで壊した大人への怒りもずっとあるし、全然無敵じゃない美鈴が本当に愛おしく感じてしまった)


【その他いろいろ】

・映画を観終わった後に改めて、清義の選択を「二人に対して愛のある選択」と表現した永瀬くんの優しい感性が本当に好きだなあとしみじみしていたんだけど、パンフでは「三人はお互いを傷つけ合っているようでいて、実は救い合っている関係でもある」と話していて、演者とキャラは別とはいえ、本当に映画は永瀬くんが演じる清義だからこそのあの表情だったんだなあと思った
 揺れる表情、そこから読み取れる葛藤、導き出した答え、とすべてが映画の清義独特の雰囲気の元に繋がっていたという感じ 選択は同じでも、心の揺れ方に原作の清義と映画の清義でそれぞれ差がありそうというか 映画の清義がよりウェットかつ繊細な感じがするというか……

 

・結末としては結局馨の思う通りというか、本当に美鈴の一番望まない形になってて、もう美鈴は馨のこと憎くて仕方ないだろうな……
 こんなことを勝ち負けで言うのは品がないだろうけど、間違いなく仕掛けられたゲームは馨の完全勝利で、でも馨はそもそも罪もないのに理不尽に追い詰められて負けたところからのスタートだから、勝ったところで失ったものは完全には返ってこないし、誰も幸せにはならないけど、「僕たちはここからまた始めていく」で映画は終わるんだよな

 

・馨のお父さん、馨が言うように強くて立派な人だったんだけど、だからこそ彼がそこまで正義感の強い人ではなかったら彼自身は助かったのかなとか、そういうことを考えてしまう
 もし美鈴からふっかけられた冤罪を見抜いて、止めたら美鈴が逃げて、そこで「自分が冤罪を免れたからまあいいや、助かった」で追いかけずにいたらあの事件は起きなかったのかなとか……
 でもそれはそれで別の正義感の強い人が同じような目に遭っていたかもしれないし、もっと目も当てられないような事態になっていたかもしれないし(あれ以上目も当てられない事態ってあるか?とは思いつつ)

(追記※馨のお父さん、「君はやり直せる」とさえ言わなければ、美鈴も一緒に落ちてやるとまでは思わなかったのかもしれないな……と考えてしまった 観念して生徒手帳見せるような素振りもしてたし……どっちにしろ清義がお父さんを引っ張るわけだが……)
 物語として私は美鈴というキャラクターがかなり好きだし、立派に生きてきた大人に自分の生い立ちも知らずに知ったようなこと言われたらそりゃ腹立つよなとも思うけど、まず仕掛けて接点をもったのは美鈴(と清義)だし、それこそ馨のお父さんからしたって出会ったばかりの高校生の生い立ちなど知りようもないから、そこで急に内心ブチギレられても知らんがなすぎるんだよな……
 でもあの瞬間の美鈴の目の演技が本当に大好きです 高校時代の美鈴もめちゃくちゃかわいい

 

・馨のお父さんが庭で首を吊ってたシーンの話
 不自然に開け放たれた窓から吹き込む雨風でリビング(たぶん)のカーテンが揺れてる一方で、庭で首を吊ってるお父さんは風に揺れることもなくただ動かずにそこにいて、そこにすごく死の描写を感じた
 本当はぎいぎい揺れてたけど、馨から見たらお父さんのすべてが止まって見えたのかもしれない……とか考えてしまう

 

・お父さんの死体を見た馨もそうだけど、駅でお父さんが清義に引っ張られて転落したのを見た時の馨も、清義を追いかけてとっ捕まえたりせずにただ呆然としてる感じだったのは気になる
 父の無実を信じていた馨は「男子高校生が引っ張るのを見た」って証言しなかったんだろうか
 証言しても取り合ってもらえなかったのかもしれないけど……

(追記※「警察も、検察も、マスコミも、誰も僕の声なんか聴いてくれなかった」って言ってたから、訴えてはいたんだ……そうだよね……すまない……)

 

・そこから馨はお父さんを無実を証明するために狂ったように法律の勉強を始めたという話だったけど、だとすれば弁護士を志していた清義や美鈴と、ロースクールという法を学ぶ場所で出会うことになったのは偶然だったのか、それとも清義たちがどんな学校にいても探し出してそこに入るつもりだったのか
 この計画を立てた以上は清義たちとの出会いも仕組んだものだったのかなとは思うけど、偶然と作為のどちらにせよ被害者の家族と加害者がロースクールで出会うというのはすごい話すぎる
 馨もどうやって清義と美鈴のこと探し出したんだろう 美鈴は被害者という立場だから名前もわかるだろうけど、清義は名前すらわからなかっただろうに……美鈴のこと調べてたら自ずとわかってきたのかな
 まさか清義と出会って仲良くなった後に加害者だって知ったパターンもある……?でもたぶん加害者だってわかって近づいてるんだろうな……?そこから清義の人間性に触れて好感を抱いたことで、馨のゲームの進め方は変わったかもしれないけど(今回のゲーム、かなり清義の善性や正義感というか馨への好意に基づいて組み立てられているので)
 馨もあの時の前髪めっちゃ短いおぼこい眼鏡くんが、あんな儚げ美青年になっててびっくりしただろうな しなかった?私はしました

 

・下宿先のおばあちゃんと清義のシーンは先に挙げた寝癖直してあげるシーンとかおにぎりのシーン(これは間接的だけど)とか好きなものばっかりなんだけど、終盤の判決前の朝に、馨の事件のニュースを熱心に見てたおばあちゃんが、清義に声をかけられたらテレビを消して清義の話を聞こうとするところもかなり良かった

 

・パンフで監督が法廷遊戯のことを「愛の話」と言って、音楽担当の安川さんが「愛の話ではあるけどラブストーリーではない」と言っていたのが両方とても腑に落ちて、大好きかつ的確な表現だなと感じています
 ロマンス要素を皆無と言い切ることはしないけど、清義と美鈴の愛がかなり家族愛っぽくて、それが寄り添って生きてきた子どもたちという感じをより強くしているのがめちゃめちゃ好みでした
 一方で、私は最初は特にそういったものを感じなかったので読んだ時はびっくりしたけど、匠海くんが清義と馨のラストシーンを「BLっぽい」と言ったのもまた愛の話の解釈のひとつとして無限に味出してくるな……と思った

 

 ・あとパンフレットの情報見ると、美鈴のあのコンクリ打ちっぱなしか?みたいな部屋には美鈴が拾ってきた壊れた人形たちがいるみたいで、へえ〜!と思って2回目以降探してみたけど、部屋を暗くしてるのもあってよく見えなかった……
 でもそういう設定が見られるのはとても嬉しいし、キャストの皆さんや監督やスタッフさんのインタビュー全部おもしろいし、主題歌担当でキンプリのインタビューも載ってるので本当に買ってよかったすぎるパンフ

 

・美鈴の髪型、ロースクール時代(清義とのつながりも周囲に隠している時)は耳が隠れるようなスタイルで、その後物語が進むにつれて、片側耳かけだったり、両サイド耳かけだったりしてたと思うんだけど、耳が出るみたいに露わになる部分が増える=美鈴の感情や思惑が観客にも見えてくる、ような部分がある気がして、そこも視覚的に興味深かったです

 

・美術というか絵面の美しさで言うと、やっぱり個人的に下宿先の金魚と永瀬廉さんの絵面が美しくて一番大好きでした
 あの夢の中で馨の幻に話しかけてるところ、永瀬くんの心配になるほど細い腕と、憔悴と諦念を含んだような儚い笑みと、青い光の水槽と、赤い金魚、本当に世の文豪がみんなあらゆる表現を尽くして歴史に刻みたいだろ……という絵すぎる
 美鈴のアパートの無機質だけど空気が湿っていて冷たそうな感じが伝わる雰囲気とかも印象的で、本当に映像面でも綺麗な映画だったなと思います

 

・原作と映画を両方浴びてまず驚いたのは、原作の方はかなり序盤の方から痴漢冤罪詐欺の話をしてるので、清義と美鈴が過去に行っていたことやその被害を受けた人の存在が匂わされていたこと
 馨がどういうキャラかは最初予告の時点では全然察しがついてなかったものの、公開直前の「父の無実を証明する」という発言が含まれた予告で、なんとなく動機というか背景は予想できた部分があるんだけど(それでもまさかあそこまで完璧な計画と常軌を逸した精神性とは思わなかった)映画は痴漢冤罪の方は中盤くらいまで隠されていた印象なので、最初は馨のお父さんが施設長なのかと思ってたら全然違った
 情報が後に出るんじゃ予想しようがないけどその点どうなんだろうな?と思ったけど、私個人としてはミステリーには明るくなく、予想外だったおかげで衝撃含めて楽しめたので不満はないです

 

・あと原作と映画の比較の話だと、美鈴のアパートの郵便受けへの嫌がらせの犯人を捜すパートで、原作だと自分たちが外から見張っている間にも嫌がらせがあった=犯人はアパートの住人である、という可能性にたどり着くまでに結構苦戦してたのが、先に映画見てたのもあってマジか!?私だったら即内部の人間疑っちゃうかも……にはなったので、映画の清義はそこからすぐ美鈴に「隣の住人はどんな人?」って聞いてたのがスマートでいいなと思った
 とはいえこれもちょっと驚いただけで気になって仕方ないというレベルではないし、原作ではそこから映画にはない清義と馨の会話のシーンに繋がるので、どちらも見どころとして良いと感じています

 

・映画観た時に清義くんの今回の事件以外のお仕事パート見たいよ~!と思っていたら原作ではそれが読めたのも嬉しかったところ
 原作の清義は他の法律事務所で働く前に美鈴のために即独立してたので、雇われ新米弁護士の時期の清義くんも欲を言えば見たい

 

※追記

・冒頭の場面でゴーー……って低く大きな音がやがて電車が揺れるリズムに近い感じでゴトン……ゴトン……ってなってたんだけど(説明難しすぎる)、これが心音にも聞こえて、ここから馨のお父さんの人生が狂って自殺してしまうんだよな……と思いを馳せた

 

・本編でよくこの地響きみたいなゴーー……って音出てくるけど、もしかしてこれ全部電車の音だったりするのかな さすがにそんなことないか?

 

・「大人を利用することでしか運命を変えられないと思い込んでいた」ってことは、つまり清義と美鈴が痴漢冤罪詐欺をしていたあの電車という舞台は「運命を変える電車」であったのかもしれなくて、ぴ、ピングドラム……

 

【まさかのイメソン】

・法廷遊戯の映画を観終わった後の感想のひとつが、「身近なオタクに説明するとしたら『ド最悪なピングドラム』かもしれない」と思ったんだけど、「救われなくて助け合ってきた子どもたち」が引っかかったのか、「加害者家族と被害者家族」が引っかかったのかはわからない
 話自体は似ていないと思うし、ピンドラは親世代の罪を理不尽に背負い続ける子どもだけど(冠葉くんは自分でもやっちゃったりしたけど)、法廷遊戯は罪を犯したのは清義と美鈴本人だし……

 

・その流れから先行上映帰り(まだ愛し生きること発売前)にピンドラの主題歌聴いてたらかなり自分の中で法廷遊戯の三人のイメソンだったので本当に一回聴いたり観たりしてほしい

 

「ノルニル」 
歌詞:やくしまるえつこメトロオーケストラ ノルニル 歌詞 - 歌ネット

公式OP映像:

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公式MV:

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「少年よ我に帰れ」 
歌詞:やくしまるえつこメトロオーケストラ 少年よ我に帰れ 歌詞&動画視聴 - 歌ネット

公式MV:

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「僕の存在証明
歌詞:やくしまるえつこ 僕の存在証明 歌詞 - 歌ネット

公式PV:

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公式YouTube

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・監督が法廷遊戯の「愛の話」と表現されてるのを読んでからはますますピンドラとの親和性……と思っています
 話は先述の通り似ていないけど、どちらも愛の話で、電車がかなり重要なシーンになってくるし……

 

・正直めちゃくちゃピンドラOPパロの清義と美鈴と馨見たいよ

 

・ピンドラとは関係ないけど、鬼束ちひろの茨の海なんとなく聴いてたら「美鈴……」になったのでこちらも入れます

 

「茨の海」
歌詞:鬼束ちひろ 茨の海 歌詞 - 歌ネット

公式MV:

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